どうやって撮ったかよく分からない『麦秋』の鉄道シーン

 映画『麦秋』(小津安二郎監督作品)の、1時間39分50秒あたりから。
 結婚が決まった(決めた)娘のことを考えながら、散歩に出た父親。
1・線路の向こう側に父親のカット。踏み切り降りてくる。踏み切り降りる。ちょっと考えて道を戻る。
2・道路傍に腰をかける父親。背中から撮る。
3・正面。小津っぽい構図のバスト・アップ。ため息をつく。
4・「1」のカットと同じ位置。電車が通り過ぎる。それを見ている父親が少しだけ見える。
5・「3」のカットと同じ位置。父親の背後を電車が通る(ここで俺的には仰天する)。
6・「1」「4」と同じ位置。踏切が開く。
7・「3」「5」と同じ位置。引き続き座っている父親。
8・雲のカット。
 …とりあえず、1・4・6を撮って、別の電車の通過にあわせて3・5・7を撮ったと思うんだけど(たぶん2も)、電車の音は後からかぶせて、つなぎ目が初見では分からないようにしている。
 これ、アニメならともかく実写だと頭痛くなる。自動車・バスとかなら借り切って撮影もできるだろうけど、電車だよ? 俺がアニメの演出する人なら、絶対真似して絵コンテ切ってみたくなるくらい、不自然に自然。いやもうシャフトならやってても不思議じゃない!
 もっと訳分からないのが、『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』の電車の通る風景なんだけど…小津安二郎の映画、に限らないけど、実写映画とにかく大変っぽい。
 ちなみにこの本読むと、小津安二郎の撮影担当者(厚田雄春)がいかに鉄道好きだったか分かります。

小津安二郎物語 (リュミエール叢書)

小津安二郎物語 (リュミエール叢書)

 
(追記)
youtubeにありました。