「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か・その3(補足)

これは以下の日記の続きです。
「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か・その2
 
だいたい、前回で終わらせようと思ったんですが、あちこちに言及・リンクされた中で気になったのがあったので。
(・∀・)イイ・アクセス2007年01月日

結局弊害だったのか功績だったのか決着つかずといったところでしょうか。

↑これはいいんですが、
いつか見上げた、あの青空の下で・・・

 ドラマより安くないと、アニメで作る意味が無い・・・などと言う話を
 昔聞きましたが…予算まで細かく調べられてますね。
 キッカケではあったと思いますが・・・その後ウン十年たってますし、結局何もしなかったからと言うオチかと

↑これもいいんですが、
↓これはちょっと困った。
【choiris〜ちょいりす〜】)

「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当らしい

そのあとに

…昨日の記事の続きなのですが、なんだか結局どっちともいえない結論になっちゃいましたねー。

と言っているので、ぼくの最初の書きかたに問題があったんだろうな、と反省なのでした。
繰返しになりますが、「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」と言っている人はたくさんいて、定説になっていると言えなくもないが、「○○」のせい、と特定個人・団体を挙げて、責任のすべて、あるいはほとんどをその特定個人・団体になすりつけるほどの具体的な証拠はうまく見つからなかった、というのがぼくの結論だったのでした。
ぼくにわかったのは、
1・手塚治虫が国産TVアニメを最初に作った人
2・そのときの制作費は、多分30分アニメの制作費としてはとても安かった
3・ただし他のTVドラマの制作費と比べると安かったかどうかはよくわからない
ということです。
それに「「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か・その2」の、

1・手塚治虫が「鉄腕アトム」を毎週50万円で作っていた、というのはどうだろう(萬年社からプラス100万円もらっていたっぽい)。
2・その「毎週50万円」でも、当時のテレビの一般的な制作費としては安いほうではなかった。とはいえそれをさらにダンピングする会社も出てきたりした。
3・キャラクターの商品化権で関係者が莫大な利益を得ることができ、逆にそれによって「アニメの制作費(を高くすること)」に対する考慮があまり進まなかった。
4・アニメーターの給料は歩合制・出来高制という能力給になった。
あと、
5・当時の関係者とか現場の人というのは、いろいろな条件が違っていたり、記憶違いなどもあるみたいなので、その発言を全面的に信用しすぎるのは危険

というのが加わると、ぼくの私的意見(結論的な感想)は、前のコメント欄でも書きましたが、
「漫画も含めて手塚治虫さんの「功」「罪」いずれも過大に評価・批判しすぎているような気もしないでもありませんです」なのです。
 
追記的な形になりましたが、この件についてさらに興味のあるかたは、以下のかたのブログテキストをご覧ください。
囚人022の避難所 「アニメーター残酷物語」は都市伝説?(長文!)

追記:
「残酷物語」が本当に都市伝説なのかどうか、私には充分な調査もできないので、明言はできません。ただ、“A級戦犯手塚治虫”説のように複雑な背景をすっ飛ばして「〜のせいらしい」というだけで片付けるのは、現状の本当の問題点への検討を妨げることもあって、よくないんじゃないかと。(現状に至った経緯を知る上での、重要な手がかりとなる説の一つではありますが。)  それと、「良かれ」と思って悲惨さを誇張して語ることがあるんだとすれば、それがかえって当事者には迷惑になってる場合もあるらしいということ。
どうも産業構造が非合理的に古臭いものに見えてならないところに問題の大元がありそうな気がしますが、どうなんでしょうか。

「追記」だけ引用してみましたが、全文必読なのです。
 
(追記)
ちょっと思い出したので、アマゾンのこんなのにもリンクしてみよう。
→『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』(伊藤 剛・NTT出版
 
(追記)
これもなかなか。
亡国データバンク日記:手塚治虫のキャラクタービジネスへの見果てぬ夢

しかしここで問題なのは、手塚のマーチャンダイジング手法を導入した後続TVアニメ群ではないかと思います。最悪でも手塚の原稿収入を期待する事ができる虫プロダクションと違い(最もそれでも無理でしょうが)、マーチャンダイジング面での失敗が即致命傷になる他のアニメ会社がTVアニメに参入した時、徐々に自転車操業に追い込まれて行き、スポンサーやTV局のいいなりになりながらジリ貧になっていった・・・。こんな想像は考えすぎでしょうか?

 
 これは以下の日記に続きます。
アニメ『鉄腕アトム』の製作費神話について・1:宮崎駿の手塚治虫批判テキスト全文その他