「10万人の宮崎勤」発言は都市伝説なのか(車輪の再再発明)
@videobird(とり・みき)様、@hiranokohta(平野耕太)様、以下の「メモ」に何か追記することはありますか?
(2010年8月1日追記)
@videobird(とり・みき)様より言及をいただきました。くわしくはテキストのうしろの「追記」をご参考ください。
以下のものが引っかかったので、
→コミケ - y_arim - はてなハイク
ここに十万人の宮崎がいると書いたマスコミもあった。
最近の表現規制をめぐる状況を考えると実に示唆に富む文章なのだが、今ではほとんど都市伝説扱いの「十万人の宮崎」がこの時点(少なくとも89年8 月〜12月)で、当時のコミケ代表によってはっきりと記されているのは注目に値する。
俺基準では全然「はっきりと記されて」いるとは思えないので他ブログで補足。
新聞の引用の伝聞情報(実物は未確認)。
→続「10万人の宮崎勤」伝説はどこまで真実か - 日々のものごと日記(政治問題中心)
そして、ある説にたどり着きます。
2005年に刊行された『コミックマーケット30'sファイル』中の「宮崎事件とオタクバッシング」というトピックに1989年8月21日の埼玉新聞の記事が引用されており、その中には「10万人が集まったコミケ会場の中の一人だった宮崎、幼女を殺害した彼と、他のビデオ・アニメファンとの違いは何だったのか…
という文面があります。これが米澤氏が言う「10万人の宮崎勤がいると書いたマスコミ」だという推測が成り立ちます。
しかし、奇妙なことに米澤氏が阿島俊名義で書いた『漫画同人誌エトセトラ'82-'98』(2004年 久保書店刊)で加筆されたコラムには、コミックマーケットの会場には、多くのマスコミが押し寄せ、無遠慮に参加者にマイクを向け、この場を知ろうとする意思もなく、単純な図式による裁断を行なおうとしていたのだ。「ここには、10万人の宮崎勤がいる」というコメントを加えたTV局もあった。
となっており、前掲のの宮崎勤事件直後の文章より具体的になっています。何故でしょう?
「「ここには、10万人の宮崎勤がいる」というコメントを加えたTV局」というのは2004年初出?
さらに引用。
普通、人間の記憶というものは最初の方が具体的になるはずです。
にも関わらず、米澤氏のコメントは宮崎勤事件直後の1989年よりも、2004年に書かれたものの方が具体的になっています。何故でしょうか。
私は、虚偽記憶であると推測します。
まぁ、「推測」なら俺もしちゃうね。「断定」でなければ。
→はてなブックマーク - 「ここに十万人の宮崎がいると書いたマスコミもあった」 - 米沢嘉博「コミケット 世界最大のマンガの祭典!」より
tezawaly リアルタイムで見た記憶はあるのだが、はっきり思い出せない。それを打ち消すような別の映像で記憶を上書きされたような気分 2010/07/31
tzt 文字メディアってのは初耳だなぁ。リポーターが興奮しながら喚いてる映像なら見たことあるけど。逆に都市伝説扱いになってるのにびっくり。 2010/07/31
→はてなブックマーク - 続「10万人の宮崎勤」伝説はどこまで真実か - 日々のものごと日記
anpo-sumeragi 東海林さんは「私ではありません」と明確に否定している。気の毒なのは有名税で「この人がそうレポしている姿」が簡単に脳内再生されちゃうんだよね・・・。 2010/07/31
y_arim otaku, doujin, comiket, history 2年前の記事。http://h.hatena.ne.jp/y_arim/9234096833783701106は車輪の再発明になってしまったな。たしかに2004年のほうは虚偽記憶の可能性がありそうだ(1989年の曖昧な書き方は、紙幅や文章の主題との兼ね合いもあろう)。 2010/07/31
zatpek 自分もリアルタイムで見た。けど、記憶では中年の男性レポーターなんだよね。平野耕太の漫画で「女性レポーター」と書いていて、あれっ?と思った。/東海林さんでないのは確か。 2009/06/22
Mossa コメント, オタク おかしいなぁ。東海林だったかは記憶にないが、女性レポーターがどっかの建物を背景にその台詞を言ったのはリアルタイムにTVで見た記憶があるぞ。その後空撮に移ってナレーションが入ったような… 2009/06/20
ardarim オタク, 同人イベント 全て伝聞情報に頼ってるからダメなんでしょうね。出典を示せない以上都市伝説の域を出ない。 2008/08/02
→『私は「10万人の宮崎勤」報道を見た!』を集める。 - 夏のサマー
まとめると噂話の部分は
・「10万人の宮崎勤」発言をしたのは女性レポーター(男性レポーターという記述もあり)
・東海林のり子が言ったという証言が多い(本人は否定)
・とり・みきが漫画でネタにしたらしい
・橋本治がFRIDAYで何かを書いているらしい
ここは事実
・『おたくの本』で米澤嘉博が言及した
・埼玉新聞が『「ここには、10万人の宮崎勤がいる」というコメントを加えたTV局もあった。』と書いた
・平野耕太が漫画でネタにした
ということでこの件をもっと調べるなら
・とり・みきの漫画を読む
・橋本治のFRIDAY記事を探してみる
「ここは事実」とあるけど、俺は実物を確認していないので伝聞情報。
埼玉新聞には「10万人が集まったコミケ会場の中の一人だった宮崎」と書いてあるような気がする(「TV局」云々は多分関係ない)。(追記:2010年7月31日現在は修正されてます)
「東海林のり子」の「否定」発言(テキスト)は以下のところなど。
→10万人の宮崎勤伝説
誤解された原因がわかりました。
3ヶ月ほど前、『芸能!裏チャンネル』の悩み相談室に
「東海林は信用できない。なぜならば、"宮崎事件"のときに、コミックマーケットに来た人々を"宮崎勤"扱いした。『皆さん、ここに10万人の宮崎勤がいます!』と発言した」
TBSのワイドショーで、私・東海林がそう発言した、ということから、私の人格そして相談内容にまで信用できないという旨の書き込みがありました。
そのときすぐ私は、「その事件を取材したけれど、絶対に発言はしていない」と説明したのですが、その後も
「そういう発言をする人間なので、コラムまでもがそんな人が書いているのでとても軽いように思えてきた」
という書き込みもありました。
(中略)
私が"宮崎事件"を報道していたのはフジテレビです。
Wikipediaでは、『TBSのワイドショーで女性レポーター東海林のり子が・・・』と書かれていたので、ここで誤解が生じたとわかりました。
当人の証言は、俺はアテにならない(意外と人間の記憶は遺漏する)ので、フジテレビで発言していた可能性も考慮。
そもそも「当人と確認できる形のテキスト」が見当たらない。
→ここに10万人の宮崎勤がいます 都市伝説 - 色々威
457 :無名の共和国人民 :06/11/14 19:25:26
>>454"10万人の宮崎勤"で検索したらwikipediaの「おたく」が出たw
宮崎勤逮捕直後の1989年8月、TBSのワイドショーで女性レポーターの東海林のり子が、
コミックマーケットに集まったオタクたちを指して、生中継で「ご覧下さい。ここに
10万人の宮崎勤容疑者が居ます!」と発言し、偏見報道として非難を浴びる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%9F%E3%81%8F
他にはめぼしいのが見あたらない。
現在、ウィキペディア「おたく」には、「東海林のり子」に関する言及なし(2010年7月31日現在)。
→おたく - Wikipedia
いつごろ記事の変更があったかは、「履歴」を見るとわかるんだろうけど、少し面倒くさい。
この件に関しては、今だとy_arimさんのほうが全然くわしいだろうけど、ぼく自身の現時点の「メモ」として。
しかし問題なのは、米澤嘉博氏の記録の曖昧さだな。
まだご存命ならば、もう少しくわしいところが聞けたんだろうけど。
ぼく個人の結論としては、
・「十万人の宮崎がいると書いたマスコミ」は、それに近い形で書いたものが、未確認だけど存在するらしいので、都市伝説とは言えない可能性が高い。
・「「ここには、10万人の宮崎勤がいる」というコメントを加えたTV局」は、今のところ事実が確認できないので、都市伝説の可能性が高い。
というところでしょうか。
しょうがないので、今どきの時代なのでとり・みき氏と平野耕太氏に、twitterで@飛ばして聞いてみよう。
この「メモ」に何か追記することはありますか?
(2010年7月31日追記)
こんな情報も。
→Twitter / 加野瀬: @kuratan ここの455でとりみき氏は当時その ...
@kuratan ここの455でとりみき氏は当時その発言をネタに漫画を描いていたという情報がありましたよ http://bit.ly/d3x9gA
リンク先。このサイトには言及済みなんですが、改めて。
→ここに10万人の宮崎勤がいます 都市伝説 - 色々威
455 :無名の共和国人民 :06/11/14 19:15:54
>>ここに10万人の宮崎勤がいます
漫画家のとり・みき氏が事件当時に漫画で描いていたのを覚えてる。
とり氏は大の事件報道マニア(何か大事件があるとあらゆる報道番組を
ビデオに撮って保存する)だから、信憑性はありそう。
だけど当時の世の中は、本当にそういう台詞を吐いてもおかしくない状態だった。
ちょっとアニメ観るのも人目を憚られるような思いだったし・・・。
(実際アニメファンの中には、グッズやビデオ親に全部没収された上、TVを観る
事すら禁止された程の悲惨な状態に陥った人もいたからなぁ・・・)
456 :無名の共和国人民 :06/11/14 19:25:16
>>455
『とり・みきのしりとり物語』?
いや、現物は知らないんだが、ゆうきまさみが
はてしない物語で「とりさんに全部言われた!!」
と叫んでいるのを読んだので。
『とり・みきのしりとり物語』、及び『ゆうきまさみのはてしない物語』を確認すれば(多分)いいのだった。
(2010年8月1日追記)
@videobird(とり・みき)様より言及をいただきました。
→Twitter / とり・みき TORI MIKI: @kuratan 返信遅くなりました。僕がいわゆる「 ...
@kuratan 返信遅くなりました。僕がいわゆる「10万人」発言をネタにしてマンガを描いた事実はありません。ここまで現物や正確な引用元が一切出ていないことからもおわかりかと思います。
→Twitter / とり・みき TORI MIKI: @kuratan 宮崎事件に関する偏ったオタク観の報 ...
@kuratan 宮崎事件に関する偏ったオタク観の報道については「NewType」連載の「しりとり物語」というエッセイで当時3回にわたって触れましたが、そこでも10万人発言?には言及していません。このような回答でよろしいでしょうか?
→Twitter / とり・みき TORI MIKI: @kuratan 付け加えれば、10万人発言が本当に ...
@kuratan 付け加えれば、10万人発言が本当にあったのかどうかについては僕はわからないとしか答えようがありませんが、少なくとも自分がテレビで見た記憶はありません。録画したもののなかにもありません。
とり・みき氏の漫画の中には「10万人」発言をネタにしたものはない、という当人の否定です。
とり・みき氏が「漫画で描いていた」というのは都市伝説?
(2010年8月1日追記)
「そもそも、報道の時期からして、コミケの取材は難しいのでは」という、時系列を考慮した意見。
→「10万人の宮崎勤」におけるTV局の現場不在証明 - 法華狼の日記
もちろん殺人自供自体は8月10日であり、すでに幼女連続殺人事件で加熱していた各報道機関は、容疑者自宅への取材を当日に行なったという指摘もある。
(中略)
しかしながら、殺人が自供された日とコミケの開催日が接近しすぎていることは、当日にTV局が乗り込む困難性を示唆しているとはいえるだろう。事件全体の構図を各報道機関が把握して解釈し、コミケと容疑者を安易に結びつける時間は極めて少なかった。
判断は皆様におまかせします。
(2010年8月1日追記)
さらに、2ちゃんねるの目撃情報まとめ。
→2ちゃんねる『「10万人の宮崎勤」放送を覚えてるヤツ集まれ』より - 夏のサマー
(2010年8月2日追記)
@videobird(とり・みき)様より追加twitter。
→Twitter / とり・みき TORI MIKI: @kuratan 10万人発言はともかく一連の報道の ...
@kuratan 10万人発言はともかく一連の報道の中でコミケへのTV取材があって、その紹介の仕方がかなり色眼鏡のかかったものだった、という記憶はあります。録ってるかどうかはベータのテープを複数本見返さないと確認できませんが、今は締切中でその余裕がありません。いずれまた。
(2010年8月3日追記)
暫定まとめ。
→「十万人の宮崎勤」伝説 暫定まとめ - 日々のものごと日記(政治問題中心)
(前略)
「いきなり宮崎みたいなレベルまで突っ走るのは特殊な例にしても、『宮崎予備軍』は相当数いるでしょう。いわゆる『オタク』といわれている連中がそうです。『オタク』が生まれる事情を知ることが、宮崎を知る近道だと思いますよ」(ロリコン事情に詳しい大学講師・酒田浩氏)
(中略)
ちなみに、Googleで検索しても酒井浩氏が何物かは全く見当が付かなかったです。
89年に大学講師なら、今はすでに教授になっていても不思議ではないのですが…
というわけで、この酒井浩なる人物が何物かは謎のままです…
(2010年8月7日追記)
追記するんじゃなくて、そろそろ別記事にしたほうがいいかも、と思うんですが、一応。
コメント欄で、以下の記事に関する情報をいただきました。
→89年夏コミ前後における宮崎事件に関する新聞読者投稿を中心に - 話の栞
当時は、オタク=アニメ系ではなくホラー系バッシング中心だったように思える。
さらに、以下の記事。
→「10万人の宮崎勤」コミケを悪者にしたのは誰だ? - 話の栞
(前略)
かようにコミケは絵がうまい若者たちの交流とステップアップの場でありこそすれ、決して気持ち悪がられるようなものではなかった。
しかし、である。
コミケ参加者をあたかも宮崎予備軍のように扱う活字メディアが現れた。
8月20日の毎日新聞朝刊「幼女連続誘拐殺人事件5 26歳宮崎勤の世界」「ちまたに群がる“おたく族”」がその記事である。
(中略)
8月16日の毎日新聞朝刊ではコミケ参加者のコメントとして「本当にいたんですか。そんな近くにあの凶悪犯が……。ぞっとする」と、あくまでコミケ参加者を記者や読者と同じ感覚の持ち主として、異常な宮崎勤と対比させる構図だったのが、8月20日の毎日新聞朝刊がチョイスしたコミケ参加者のコメントはよりにもよって「『オレも女の子にいたずらしたいな』と思うことはある」となっており、これではまるでコミケ参加者=記者や読者の理解できない異常な存在=宮崎勤ではないか。
一体、わずか4日の間で毎日新聞に何があったのだろうか。
思うに8月16日の記事というのは記者が現場へ出向いてコミケ準備会からちゃんと話を聞き、3月の参加者名簿を借りて(当時は個人情報保護の観念はなかった)、宮崎勤のブースの近くにいた会社員に連絡を取ってコメントを貰ったのだろう。
ところが8月20日の記事は12年前の青酸コーラ事件の捜査幹部のつぶやきを持ちだしてきている事から、少なくとも12年以上のキャリアを持つ中年記者がアンカーとして書いたものではないかと推察される。
はじめに結論ありきの「ためにする」記事の典型で、恐らくはコミケの名簿からロリっぽいエロ漫画を出展している人をピックアップして片っ端から当たり、何人目かから「オレも女の子にいたずらしたいな」という、同記事のテーマにおあつらえ向きなコメントを誘導尋問のようにして引き出したのではないか。
(後略)
また毎日か!?
「また」の一例は、ぼくの日記の以下のものなどを参照。
→『クライマーズ・ハイ』----新聞・報道が元気だったころのノスタルジー映画
(2010年8月29日追記)
これは以下の日記に続きます。
→とり・みき『とり・みきのしりとり物語』で言及されている「宮崎勤事件」を引用してみる