「『ウサギ小屋』は誤訳だった!」というようなことが書いてある本

ぼくの日記のコメントから。
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20060910/oota03#c

# ss 『エントリとは全然関係ないんですが、お気に入りのネタかと
http://www.v-shinpo.com/06special/03special/special.html

で、紹介されたところ。(どうもありがとうございます)
誤解・誤訳が生んだ日本人観 日本人は評価されている

マッカーサーの「日本人は十二歳の子供である」という発言や、「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」といった言葉は、日本人をネガティブに評する言葉としてすっかり定着している。しかし、発言者には批判的な意図はなかった。報道する側が少々誤解してしまったという。
その他、日米開戦の原因の一つとなったのは米国側による日本の暗号電報の誤訳、日本のメディアや政治家がよく使う「グローバル・スタンダード」などという言葉は、実際は英語ではなく和製英語、などを紹介した、メディア側の人間としてはドキリとさせられる一冊だ。

新潮新書『『エコノミック・アニマル』は褒め言葉だった ー 誤解と誤訳の近現代史』(多賀敏行)という本の紹介です。
で、昔流行ったフレーズの、日本人の住居に関する「ウサギ小屋」の誤訳というのは、こんな感じ。

「ウサギ小屋」については調べると、初めて登場した際、EC(欧州共同体)の報告書に「日本人はウサギ小屋のような住居に住んでいる」との趣旨のことが書いてあるとのことでした。当時の新聞を調べてみると「ウサギ小屋と変わらぬ住宅環境に生息している働き気違いの国」というように表現されています。
そこで、英語ではどのように表現されているか調べてみると、「日本は西欧人から見るとウサギ小屋(rabbit hutches)とあまり変わらないような家に住む労働中毒者(workaholics)の国」となっています。但し、問題の箇所以外を読んでも、日本に対して批判的ではない。その上、文法的な誤りがいくつかあるなど、英語としてあまり出来がよくないのです。
おかしいな、とよく読むと、原本はフランス語で、英語に翻訳されたと注釈があります。ウサギ小屋については原文では「cage a lapins(カージュ・ア・ラパン)」。辞書で「lapin」を調べると「cage a lapins」で一つの成句になっていて、「画一的な狭いアパルトマンの多くから成る建物」と定義してある。つまり、都市型の集合住宅のことを表す俗称で、別にほめる意味はないが、侮辱する意味で使ったものでもないようだ、ということに気付きました。フランス人の住むパリの集合住宅もこう呼ばれます。何も特に日本を揶揄するために新たに作った表現という訳ではないのです。

ええ〜!? これも誤訳ですか。フランス語から英語への翻訳段階でのミスみたいですが。普通に訳すと「都市型の集合住宅に住んでいる」みたいな感じ?
なんか、「第四の権力」といい、昔の人(20世紀の人)は原典に当たるのが難しかったのか、原典に当たるという発想がなかったのか、翻訳テキストに対して信頼する度合いが高かったのか、いろいろだとは思いますが、こういった「二十世紀的フレーズの、原典にもとづく洗い直し」というのは、新書的本などを執筆しようと思っている人には一つのヒントになるんじゃないかと思いました。
ぼくの前の日記の参考テキストとして、こんなのを。
「第四の権力」という誤訳がマスコミとマスコミ批判者を誤解させている件について
アマゾンで、紹介した本を買う場合はこちら。
「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史 (新書)アフィリエイトなし)