美空ひばりの映画『悲しき瞳』で「男女同室修学旅行・着替え」その他を考える

今日たまたまDVDで見ていた映画『悲しき瞳』(美空ひばり主演)では、中学生の修学旅行で普通に男女が同室で寝ている(しかも男女ともに着物の寝巻)のに驚いたので、その話からいろいろします。
この映画は1953年の映画で、くわしい情報は以下のところなど。
悲しき瞳 - goo 映画
あらすじ 悲しき瞳 - goo 映画(ストーリーの結末が記載されていますのでご注意ください)
こういう昔の映画を見るときに気になるのは、「当時の現代」を描くのにどの程度のフィクションを入れているのか見当をつけるのが難しいことで、これがたとえば時代劇なら「この時代にこんな設定はありえないだろ」ということはいくらでもあるし、昔(映画初公開時)の時代劇を見る人もそこらへんの目茶苦茶さに寛容だったんだろうなぁ、と判断がつくわけです。
ところがこの映画『悲しき瞳』は、「佃島」にある中学、という設定なんですが、「1950年代前半の話として、どこまで現実を入れているか」という背景が不明なんですね。
荒川土手と思われるような、まるで夢の中の景色にしか見えない昔の日本の中で、子供(というか、少年少女)は昆虫採集を楽しんだり、大人たちは下町(というか、ほとんど場末)の商店街で借金に苦労したりします。もう全部フィクションとして見るのなら、それはそれでいいんでしょうが、リアルの入り込み具合が謎で、どう考えても「歌って踊る美空ひばり」は嘘でしょうけれども、「制服で学校(普通の中学校)に通わない田辺瞳(=美空ひばり)」とか、「○万円が修学旅行の旅行代金として妥当なのか」がわからない。もちろん調べればわかると思います。そういう流れの中に、「修学旅行に行って、旅館で大騒ぎをする男女同室シーン」があるわけです。
これが、当時の人たちにとって「いくら都会の中学生でもそんなことはないだろう」とか思って見ていたのか違うのか、それに興味を持ったわけです。今の人たちが見て思うことは「いくら1950年代の昔とはいえ、そんなことはないだろう」「多分そのようなことは本当にあったんだろう。ずいぶん今とは違うもんだな」のどちらかでしょう。ぼくは前者のように見ていましたが、後者のような見方をする人間に「そんなことはない。この映画のその部分は嘘だ」と否定するほどの材料をぼくのほうでは持っていないのですね。
1950年代をリアルで体験している人からそれが本当なのかどうか聞こうとしても多分「うちの学校は違ってたけど、そういう例があるって話は聞いた」みたいな、まるで現代(00年代)における「男女同室着替え」と同じようなことになるかもしれません。
 
ということで、こんなところから、
opeblo - サヨク都市伝説
こんなところへ。
Imaginary Lines - 「手をつないで一斉にゴール」が全国各地で大流行している!?

昨日のエントリに関しまして、高市氏の公式サイトの中にある「手をつないでゴールインする徒競争が全国各地の運動会で大流行」という文章に反応をいただきましたので、ちょっとググってみました。
「徒競走 ゴール 平等」や「徒競走 順位」などで検索をかけたところ大量に引っかかったのですが、その多くは「らしい」「そうだ」「と聞いた」など、伝聞をもとにしたもので、それらの前後に「うちの学校は違うけど」といった言葉がついているものも多くありました。一方、そういう事実が「ある」という前提で書かれている文章も多くあったのですが、実際に自分が見たとか、具体的な自治体名が挙げられているということはなく、伝聞を鵜呑みにして書かれているのではないかという感は否めませんでした。

この「うちの学校は違うけど」というのは典型的な「伝聞情報・(都市)伝説パターン」で、「聞いた話なんだけど、人を食っている部族がいるらしいな」「ああ、俺たちは食わないけど、山の向うの村では食ってるって話だよ」ということで、探検隊が「山の向うの村」に行ってみたら「そりゃ○○族の話だな。もう一つ山の向うの話だよ」と、どんどん…。まぁ、実際に「人を食っている部族」というのはいたりしたので、真実を確かめることは悪いことではありませんが、「あいつらは人を食っている悪い部族なんですよ! 奴らはぼくたちの共同の敵だと思いませんか!」とか言う人には、「ちょっと待て」という勇気が欲しいところ。
 
そして、こんなエントリーなど。
chanbara CLOCK: 「伊勢崎のジャンヌダルク」 伊藤純子市議会議員

久々に学力低下な人を見た。清々しさすら感じる。もう思想とか主義主張とかそれ以前のレベル。「意見云々以前に頭が悪いからダメ」の典型。

こちらへ。
群馬県伊勢崎市議会議員 伊藤純子:「男女混合名簿」が引き起こすモノ

したがって「ジェンダー教育こそ、性犯罪の起因となるもの」と定義します。恥ずかしながら、伊勢崎市が全国第7番目に施行したと豪語する「男女混合名簿」なんてものは、青少年の心を乱すとんでもない代物であります。もう、見過ごすわけにはいきません!
現在、伊勢崎市が施行しているこの「男女混合名簿」に反対していただけますよう、どうか全国の良識あるみなさまからの「非難の声」をお寄せください。声の多さがつのり次第、政策実行に移りたいと思っています。ぜひ、ご協力のほどを!

それのコメント欄から。

14. Posted by 名無しさん 2006年01月17日 07:38
ちなみに。

▼企画[考現鏡]説明責任

2006.01.06 南日本新聞 朝刊

>「勇み足があった」。昨年十一月、対面した「新しい歴史教科書をつくる会」の八木秀次会長は非を認めた。二〇〇三年、鹿児島県議会で取り上げられた全国の学校におけるジェンダーフリー教育の実例に関し、「関係自治体や学校が事実を否定した」とする本紙報道を、著書で全面否定したことだ。

>問題の実例は「東京の高校で修学旅行時に男女同宿させた」など九件。八木氏は二件は伝聞と週刊誌報道で情報を得たが、学校など当事者に一切確認していない。残る七件は「知らない」と答えた。
 
15. Posted by 名無しさん 2006年01月17日 07:38
>〇三年に実例を挙げた吉野正二郎県議(自民)は〇五年六月、県議会で八木氏の著書を引き、自身の正当性を強調した。その後、再三取材を要請するが拒否、実例を裏付ける根拠は示さないままだ。

・・・

>いつどこで誰が何を。証拠は。議会は酒場ではない。言いっぱなしは許されない。

これじゃ”捏造”だと指摘されても否定できませんな。

その新聞テキスト(南日本新聞)を探してみましたが、二次資料(転載テキスト)しかなかったので、それを掲載しておきます。こんなのとか。
成城トランスカレッジ! ―人文系NEWS & COLUMN― - 「八木秀次氏、男女同宿など実例の“非を認めた”」

「勇み足があった」。昨年十一月、対面した「新しい歴史教科書をつくる会」の八木秀次会長は非を認めた。二〇〇三年、鹿児島県議会で取り上げられた全国の学校におけるジェンダーフリー教育の実例に関し、「関係自治体や学校が事実を否定した」とする本紙報道を、著書で全面否定したことだ。
問題の実例は「東京の高校で修学旅行時に男女同宿させた」など九件。八木氏は二件は伝聞と週刊誌報道で情報を得たが、学校など当事者に一切確認していない。残る七件は「知らない」と答えた。
〇三年に実例を挙げた吉野正二郎県議(自民)は〇五年六月、県議会で八木氏の著書を引き、自身の正当性を強調した。その後、再三取材を要請するが拒否、実例を裏付ける根拠は示さないままだ。
「保健福祉行政に絡む疑惑事件がある」。同年九月の県議会では栄和弘議員(自由連合)がそう発言した。委員会で「議会の権能として解明する責務がある」と参考人招致を提案。栄議員の発言のみに基づき「疑惑」の当事者とされた県議、社会福祉法人、ゼネコン関係者が十月に招致され、栄議員らの厳しい追及に遭った。しかし栄議員が「疑惑」の根拠とする告発人は欠席。再度の要請も欠席した。
そして参考人招致に消極的だった他委員を「疑惑にフタをした」と批判した栄議員自らが、十二月の委員会を急きょ欠席。委員会は「発言を信用できない」として審議を打ち切り。栄議員の問題は政治倫理審査会に場を移した。
いつどこで誰が何を。証拠は。議会は酒場ではない。言いっぱなしは許されない。

(太字は引用者=ぼく)
なお、以下のところでは、
館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会             (略:ファイトバックの会) : 八木秀次氏、男女同宿など実例の“非を認めた”

(社会部・豊島浩一)

と、記者名が記載されています。
ところが、同じコメント欄でこのような指摘も。
群馬県伊勢崎市議会議員 伊藤純子:「男女混合名簿」が引き起こすモノ

27. Posted by なめ猫♪ 2006年01月18日 21:20
こんばんは。
ここも荒れていますね。

鹿児島の吉野先生を批判しておられますが、インチキ取材をして強引に幕引きを図ったのは南日本のほうです。

同じ九州でお会いしたこともあるのでそういう書き方を見ると黙っていられません。

先生、頑張って♪ください。

(太字は引用者=ぼく)
インチキ取材かどうかは不明ですが、ちょっと興味を持ったので、あれこれ調べてみることにしました。
一応、その前に伊藤純子さんのテキストを、テキストの意味ではない部分から批判しているものを紹介しておいて。
「伊勢崎のジャンヌダルク」伊藤純子氏(群馬県伊勢崎市議会議員)の記事と読売新聞の記事との比較

実際に記事をよく読んでみると、確かに似通った部分がたいへん多いことが確認できます。しかし同時に、読売の記事と伊藤氏の記事とでは、ところどころ異なった個所が見受けられます。そこで今回は両者の記事を照らし合わせて、一部の「主張が異なる個所」に焦点を当てていただこうと考え、「主張が異なる個所」を黄色の蛍光色でライン致しました。どうぞお役立てください。

まず、「吉野正二郎県議(自民)」の、「〇五年六月、県議会」での発言を探してみることにします。
以下のところから検索できるようです。音が出るので注意。
鹿児島県議会

2005.06.28 : 平成17年第2回定例会(第5日目) 本文
(前略)
前回の一般質問のときも、私は幾つかの事例を挙げて持論を展開したわけでありますが、その事例と言いますのは、過激な性教育や男女一緒の更衣室での着がえなどの実例等を幾つか挙げての質問でしたが、後日、地元南日本新聞の豊島浩一記者が調べた結果、「そんな事例は全くなかった」と大きな記事を載せられました。まるで私が全く根拠のないことを言っているという趣旨の記事のように感じられました。また同時に、このときの議会で採択した県内の幼稚園、小・中学・高等学校でジェンダーフリー教育を行わないよう求める陳情に対しても、ジェンダーフリーに詳しいかごしま文化研究所の三嶽公子所長のコメントとして、「多くの情報を集めているが、陳情書にあるような事例を私は見たことがない。伝聞の情報をうのみに採択するとは、県議会の審議がずさんとしか言いようがない。議会審議は冷静に事実、データに基づくべきで、感情論だけで判断するのは非常に怖いことだ」と話したという記事まで御丁寧に掲載されておりました。私は事例に挙げた中学や高校の父母の方たちから直接聞いた話でもあり、個人名までは申し上げられませんでしたが、具体的に学校名までこの記者には伝えておいたのですが、なぜかあんな記事になったわけです。私はこの記者には、その後も幾つもの事例が全国から出ていること、産経新聞や読売新聞の社説や記事の中にも、また他のメディアにも、私が例に挙げた地域での実例が数多く報道されていることなど指摘しました。しかしながら、その後全く誠意ある回答は得られませんでした。
最近、書店で求めた書籍を読んでおりますと、「女性天皇容認論を排す」という八木秀次先生の本の中で、平成十五年七月八日に鹿児島県議会が全国に先駆けて県内の幼稚園、小・中学・高等学校でジェンダーフリー教育を行わないよう求める陳情を採択した件に関して、以下のような記述がありました。以下、引用します。「なお、地元紙南日本新聞(八月五日付)は陳情の根拠となっている男女同室宿泊や同室着替えを事実無根と否定してみせるが、すでに紹介したように事実はいくらでもある。同紙の取材能力に疑念を持たざるを得まい」と書いておられます。
また、同じく八木先生と西尾幹二先生の共著の「新・国民の油断」の中に以下のような記述があります。平成十六年十一月八日、神奈川県平塚市が主催した「ジェンダーフリーのどこが悪い」と題した講演会の中で、上野千鶴子氏が述べています。以下、引用します。「鹿児島で採択された後、南日本新聞が男女共同着替えだの、ランドセルの色の授業などまったくない、ということを突き止めた。これを書いた記者は、性教育をやっている河野美代子さんの活動を一緒にやっていた人。河野さんがこれを知って『よくやったわね』と喜んだ。」と講演会の中で上野氏が話しております。以下、八木先生の著書を引用します。「なお、ここで南日本新聞が取材した結果、男女同室着替えの実態がなかったことがわかったとの話はまったくデタラメです。川崎市の県立高校は南日本新聞の取材では否定しながら、世界日報の取材ではこれを肯定しています。『根拠はない』のではなく、あるのです。」、「それにしても、あることをなかったことにして報道する記者自体が彼らとグルの活動家であるとの暴露には、正直、驚かされます。」以上、引用しました。

(太字は引用者=ぼく)
うわー、今度は「前回の一般質問」と「後日、地元南日本新聞の豊島浩一記者が調べた結果、「そんな事例は全くなかった」と大きな記事」と「議会で採択した県内の幼稚園、小・中学・高等学校でジェンダーフリー教育を行わないよう求める陳情」と『女性天皇容認論を排す』と「南日本新聞(八月五日付)」と『新・国民の油断』の関連テキストを探さないといけないのです。
しょうがないので、少しさらに後日調べてみることにします(個人的メモ)。
以下のところから、
鹿児島県議会の発言問題
この件に関する、上野千鶴子さんの抗議文はこちら。
鹿児島県議会の発言問題:鹿児島県議会での吉野正二郎議員発言に対する抗議書

(前略)
第2に、八木秀次氏を引用しながら、私の名前に言及した部分について。吉野発言の該当部分は以下のとおりである。
「(前略)これを書いた記者は性教育をやっている河野美代子さんの活動をいっしょにやっていた人。河野さんがこれを知って、よくやったねと言って喜んだと、講演会の中で上野氏が話しております。」「(前略)それにしてもあることをなかったことにして報道する記者自体が、彼らとグルの活動家であるとの暴露には正直おどろかされます」。
「グル」というのは、「互いに示し合わせて、謀議を図る」という意味で使われる言葉だが、名指しされた記者、河野氏、そして上野のあいだには、書かれた記事について相互に接触がないことは、吉野氏による引用からも明らかである。事実に反することを、しかも「グル」という品位のない用語を用いて言及した吉野発言はとうてい容認できるものではない。たとえ引用とはいえ、それを批判せずに用いている以上、吉野氏が八木氏に同調していることは明らかである。
(後略)

特に批判せずに用いて(引用して)みますが、別にぼくは上野千鶴子さんに同調しているわけではありません。「こういう意見(抗議)もあった」という紹介をしているだけです。まぁ、文脈的には吉野正二郎さんは八木秀次さんに同調しているとはぼくも思いました。
南日本新聞の記事。(「内容の一部」だそうです)
成城トランスカレッジ! ―人文系NEWS & COLUMN― - よくみてみよう。

ジェンダーフリー教育問題 本紙記事「でたらめ」
吉野正二郎鹿児島県議会議員は28日の県議会一般質問でジェンダーフリー教育問題について、同教育を批判する書籍を引用する形で、南日本新聞の記事(2003年8月5日付)を「でたらめ。あることをなかったことにして報道した」と批判した。
記事は同年6月、吉野議員の県議会一般質問での発言を受けたもの。行き過ぎた教育の実例として、(1)川崎市や福岡県立大牟田北高校で体育の時間など男女が一緒の更衣室で着替えさせられた(2)東京・国立市の高校は修学旅行で男女が一緒の部屋で宿泊させられた(3)川崎市の公立中で男女一緒に身体検査を受けさせられた−などと指摘したが、当該自治体や学校が事実を否定している、という内容だった。
吉野議員はこの日の議会で、取材記者を名指しし当時の報道を「私が根拠のないことを言っていると感じられる」と批判。「事例に挙げた中学や高校の父母から直接聞いた話」と強調した。
一方、関係自治体や学校側は28日、南日本新聞の電話取材に対し、吉野議員の指摘をあらためて否定した。
大牟田北高校の近藤博文教頭は「当時も今も男女が同じ更衣室で着替えることはない」。川崎市教育委員会健康教育課の藤原淳子指導主事は「まったく事実でない。ありえないし迷惑」。都教委高校教育指導課の上村肇主任指導主事は「聞いたことがない。万一あったら地元で大騒ぎになる」と否定した。
記事はきちんと取材
有川賢司南日本新聞社編集局長の話 吉野議員が指摘した南日本新聞の記事はきちんとした取材に基づいている。今後も的確な報道を続けていく。

ということで、ジェンダーフリーに関する「きちんとした取材」「的確な報道」の結果、「八木秀次氏、男女同宿など実例の“非を認めた”」ということになったみたいですが、その後八木秀次さんのほうから反論があったわけです。
南日本新聞が、捏造記事(正論3月号で八木氏が反論) - ぶっ飛ばせジェンダーフリー 真の男女共同”家族・社会”をめざそう

<以下、引用> この記事の中で「二件」というのは男女同室着替えのことで、福岡県立大牟田北高校の教頭は『週刊新潮』の取材ではその事実を認め、『南日本新聞』の取材では否定、川崎のS高校も『南日本新聞』では否定、『世界日報』では肯定ということで、私は豊島氏に「これでは真相は藪の中」と述べた。そして「同室着替えはどこにでもある」ということの根拠として、自民党の「過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が昨年十月にまとめた事例集を見せた。事実、内閣府男女共同参画局も最近、男女同室着替えがあったことを認めている。(『男女共同参画基本計画』)。
私は男女同室着替えが鹿児島県内でも行われていることを伝えた『南日本新聞』二〇〇三年九月二十五日付、十月五日付の記事を示すと、豊島氏はその事実を認め、「自分も問題だと思う」と述べたものの、「それはジェンダーフリーとは関係ない。単なる田舎仕事に過ぎない」と繰り返しジェンダーフリーを擁護しようとした。

この「正論」2006年3月号を読んでみないとよくわからないところが多いんですが、それのコメント欄から。

事実、鹿児島県教委は公立小(596校、5・6年のみ)、中学校(273校)のすべてを対象に混合着替えの実態調査を行い、小学5・6年で50%、中学で8%が男女混合で着替えていると発表しました。高校に関しては調査がないので分からない。他県の状況も調査がないので分からない。だから、全国的に小中高すべてを対象に調査をやればいい。

また調べなければならないようなことが出てきました。以下のところで実態調査はわかるんだろうか。
鹿児島県教育委員会
「福岡県立大牟田北高校の教頭」に電話してみた、という人もいるみたいですが、情報元が曖昧なので本当なのかどうか。
上野千鶴子が鹿児島県議会に噛み付く・2 - 男女共同参画社会基本法を廃絶せよ!2006年11月日

さて、電話で教頭先生に聞いたところ、「自分は今年赴任してきたばかりだから当時のことは知らない。そんなことはやっていない。ちゃんとやっている」と説明されました。

「今はやっていないが、昔はやっていたという話は聞かないこともない」とか、「うちの学校はやっていないが、他ではやっているという話を聞いたことがある」みたいな都市伝説ですか。
オピニオン●公と私

体育の授業や部活動の前に、高校生の男女が同じ教室で着替えをしている。そんな高校が珍しくなくなっている。高校生と言えば、男子はひげが生え、女子は胸が膨らんで、男女の性的特徴が明らかになっている年頃である。福岡県立大牟田北高校の教師によると、学校側が教室で着替えろと指導しているのではない。生徒側がそれを気にしない感覚になっているのだという。小学校の頃からジェンダーフリー教育を受けているので、もはや軌道修正がきかない状態になっているのだという。

(太字は引用者=ぼく)
 
ということで、このデータの紹介です。長かったなぁ。
生徒指導等に関する現状について 「学校における男女の扱い等に関する調査」について−文部科学省

(前略)
【体育時における着替えの状況】
(中略)
<高等学校>

1年生 2年生 3年生 4年生
44(1.05パーセント) 43(1.02パーセント) 43(1.02パーセント) 0(0パーセント)

(後略)

1.02%は普通に「珍しい」とは思いますが、ぼくの判断としては「あることはある、と言える数字だが、「小学校の頃からジェンダーフリー教育を受けている」からかどうかはわからない」(もっと個別の因果関係を知る必要がある)というところです。
しかしこの記事はひどい。
はてなブックマーク - 身体検査:公立小学校の16.4%が男女同室 文科省調査−今日の話題:MSN毎日インタラクティブ
例によって元記事が見えないので、記事を引用しているところを探してみました。
ステイメンの雑記帖 | ホントかよ

体育着替え:公立小学校の6割強で男女同室 文科省調査
 
全国の公立小学校の6割強で体育のための着替えを男女同室で行っていることが、文部科学省が行った「学校における男女の扱い等に関する調査」で分かった。調査では男女同室での宿泊など一部に問題があることも分かり、同省は30日、「児童生徒に羞恥(しゅうち)心や戸惑いを感じさせる恐れが大きい」として都道府県・政令市教委に対し、是正を求める通知を出した。
 調査は、「学校に行き過ぎた男女平等の考え方がある」との保護者らの指摘を受けて初めて行った。全国の公立の幼稚園、小中高校など共学の約4万4000校が対象で、男女同室での宿泊や身体検査など7項目にわたって05年度の実態を調べた。
体育時の着替えを男女同室で行っているのは小学校では62.97%、中学校の7.49%、高校の1.12%。林間学校やキャンプなどで男女同室での宿泊は小学校の1.55%、中学校は2校で、高校はゼロ。
身体検査を同室で行ったのは小学校の16.4%で、5年生以上や中高はなかった。男女同室で水泳の着替えをしていたのは小学校の低学年を中心に45.26%で、中高はゼロだった。また、運動会や体育祭で男女混合の騎馬戦を行ったのは小学校の4.28%、中学は29校、高校は2校あった。
文科省は「着替えは男女別室が基本。空き教室を使ったり、なければついたてやカーテンで仕切るなどの配慮を求めたい。男女混合の騎馬戦も身体接触を不快に思う児童生徒がいるなら、教育上必要はない」と話している。

ぼくが「生徒指導等に関する現状について 「学校における男女の扱い等に関する調査」について−文部科学省」で確認した限りでは、「体育のための着替えを男女同室で行っている」のが「6割強」なのは小学校1・2年生」だけで、「5・6年生」に関しては6〜8%だったのですが。それも「体操服の上に着ている制服や上着などを脱ぐだけのような場合も含む」の数字。
urlから推測するだけなんですが、毎日新聞の記事は多分2006年の6月30日に書かれ、文部科学省のデータ公開は7月末におこなわれたものだと思います。文科省のネットでの情報公開が遅すぎて、はてなブックマークのほうはそれが確認できないまま、6月30〜7月1日までにコメントがつけられたものがほとんどのようです。もう、今となっては元記事が読めないのでどうでもいいことですが、あわてブックマークには用心しないといけないのです。
ということで、まとめテキストを紹介しておいて、終わりにします。
成城トランスカレッジ! ―人文系NEWS & COLUMN― - ジェンダーフリー=男女同室着替えさせまくり説についてのまとめ。

ちなみにこの調査を受けて、ネット上では、「保護者の訴えで実際に聞いた(と書いてある)のだからあるはずだ」(保護者がたまたま見た事例をジェンダーフリーと結びつけて訴えた、あるいは訴えを聞いた人が無理やり結びつけた可能性はスルーですかそうですか)、「偏向報道に違いない」(同室着替えを報道した側のメディアはそこまで信用できますかそうですか)、「このような状態をスルーすること自体がジェンダーフリーの成果だ」(やっぱり通事的な議論はスルーですかそうですか)、「批判を受けて学校が隠しているはずだ」(そこまで教育方針に自信がないことを学校をあげてわざわざやりますかそうですか)、などなどと噴き上がっていた人も何人かいたけれど、そこまで自分のリアリティに固着することばかり考えている人は国の教育なんて憂う資格などないんじゃないだろうか(もちろん権利はあるけどさ)。

成城トランスカレッジ! ―人文系NEWS & COLUMN―」の人のテキストは面白くて勉強になるんですが、ときどき情報元に関する手抜きに感じられるようなところがあって難儀することがあります。今回の場合は、「ネット上」で、
1・保護者の訴えで実際に聞いた(と書いてある)のだからあるはずだ
2・偏向報道に違いない
3・このような状態をスルーすること自体がジェンダーフリーの成果だ
4・批判を受けて学校が隠しているはずだ
と、「噴き上がっていた人」のテキストがある場所にリンクをしておいていただけるとありがたかったのです。
今のところ、「南日本新聞の電話取材に対し、吉野議員の指摘をあらためて否定した」という南日本新聞の記事はなかなか確認は難しいのですが、「東京・国立市の高校は修学旅行で男女が一緒の部屋で宿泊させられた」というのは、やはりいつごろの時代のことなのか疑問に思ったのでした。
映画『悲しき瞳』の中の「男女同室修学旅行」ですら、それが事実だったかどうか不明なので猛烈真相が知りたいんですが、そのころの「ジェンダーフリー調査」(フィクションではない実態調査)は多分ないと思います。