米兵(海兵隊)の犯罪率と「ファースト・レイプ」は本当にあったのかについて

 こんな事件があったわけですが。
女子中学生暴行容疑で米兵を逮捕沖縄タイムス

女子中学生暴行容疑で米兵を逮捕
北谷町 コートニー所属の海兵隊
 
 十日午後十時半ごろ、女子中学生(14)を本島中部の公園先路上に停めていた乗用車内で暴行したとして、沖縄署は十一日午前、在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属のタイロン・ハドナット容疑者(38)を強姦の容疑で逮捕した。ハドナット容疑者は「抱き付いたり押し倒したりはしたが、暴行はしていない」と容疑を否認しているという。
 同署によると、ハドナット容疑者は同午後八時二十分ごろ、沖縄市のコザ・ミュージックタウンで友人数人といた少女に「送っていくよ」と声を掛け、基地外にある北中城村のハドナット容疑者の自宅にバイクで連れて行った。少女は怖くなって逃げたが、ハドナット容疑者は再び「ドライブしよう」などと車で連れ出し、車内で暴行したという。
 心配した友人らが、ハドナット容疑者に連れ出された少女の携帯電話に連絡したところ、「助けて」と答えて電話が切れたため、同署に通報した。同署は全県に緊急配備し、同容疑者の行方を追っていた。
 少女は暴行後に解放され、公園の近くでうずくまっているところを警察に保護された。
 少女が男の自宅や車、人相などを覚えていたため、同署が自宅にいたハドナット容疑者に任意同行を求め、緊急逮捕した。

 まぁ他の新聞なども報道していますが。ぼくの今のところの姿勢は「詳細な続報を待ちたい」という感じ。もうすでに実際にレイプがあったものとして容疑者について何か言っている人も目立ちますが、そういう人は過去のいろいろな報道で何をどのように学んだのか皆目不明です*1。容疑を認めている、ならともかく、容疑を否認している、というのが気になる。
 さらに気になったのは米兵・海兵隊の犯罪率が高いのか低いのか、だったのでした。
米海兵隊の駐留地別犯罪率

米軍海兵隊の駐留地別に、刑事被告人数を全要員数で割ったもの(88年以降)
日本(沖縄)駐留海兵隊の犯罪率の高さがわかる

↑この表で見ると「0.41%」ぐらいですが、米国内の場合だとどれも「0.2%」以下。倍以上の違いがあります。
 このデータの元になっている資料(アメリ海兵隊が公開している資料)などについてご存知のかたは教えてください。(追記:以下のところを参照のこと。→米兵の犯罪率に関するその後の情報
 あと、こんなのとか。
海外安全ホームページ

アメリカにおける2005年の犯罪認知総件数は、FBI(米連邦捜査局)の統計によると約1,156万件(放火を除く)であり、そのうち殺人、強姦、強盗、暴行及び傷害の凶悪・暴力犯罪は、前年より2.3%増加し、約139万件に達しています。これに対して、2005年の日本の刑法犯認知総件数は、警察庁警察白書によれば約227万件であり、そのうち凶悪・暴力犯罪は約7万件となっています。アメリカの総人口が約2億9,641万人であるのに対し、日本の総人口は約1億2776万人と半分以下であることを考慮しても、アメリカにおける犯罪は日本と比べ格段に多くなっています。
 アメリカでは自分の身は自分で守るというのが常識であることを認識し、常に十分な注意を怠らないことが肝要です。

 アメリカの凶悪犯罪は日本の約20倍ですか。人口比だと10倍以上か。
 ネットで見つけた情報では、こんな感じ。

A:県内刑法犯検挙人員(在沖米軍人によるもの除く)
B:沖縄県人口総数
C:人口比犯罪率
D:在沖米軍検挙人員
E:在沖米軍人総数(軍属,家族含む)
F:在沖米軍人総数比犯罪率
        A    B    C    D   E   F
平成10年  2282 1298139 0.18%  46 50336 0.09%
平成11年  2413 1308010 0.18%  59 48626 0.12%
平成12年  2538 1318220 0.19%  67 49502 0.14%
平成13年  3272 1326518 0.25%  72 49279 0.15%
平成14年  3734 1335871 0.28%  100 49346 0.20%
平成15年  3922 1344148 0.29%  133 50826 0.26%
平成16年  3904 1353010 0.29%  72 45354 0.16%
平成17年  4281 1361594 0.31%  65 42570 0.15%
平成18年  4125 1368137 0.30%  63 43550 0.14%
(追記:日本の警察によって検挙されない、米兵の米軍基地内の犯罪もあるという伝聞情報を伝える者もあるのだが、それに関するデータは不明)

 ソースは以下のところ。
県内刑法犯検挙人員 沖縄県警本部犯罪統計資料刑法犯総数平成20年度(pdf)
沖縄県人口総数(xls)
在沖米軍人総数 沖縄の米軍及び自衛隊基地(統計資料集)平成19年3月版(pdf)
沖縄県警察 | 情報公開:米軍構成員等及び一般外国人検挙状況
 ちなみに、全国の「都道府県別刑法犯認知件数」は、たとえば以下のところなどを参考に。
平成17年の県内の治安情勢(概況)・群馬県(pdf)←これの3ページ目。
 沖縄の「人口千人あたりの認知件数」は「14.2人」で「22位」。まぁ、「検挙人員」と「認知件数」はちょっと違うんですが、全国都道府県のだいたい真ん中ぐらいの犯罪率じゃないかという感じです。
 個人的には、米兵の犯罪(容疑)に関して、米軍基地反対に動きはじめた個人・団体に関する情報が気になるところです。
沖縄の米兵暴行から1週間…抗議の県民大会計画 : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

沖縄の米兵暴行から1週間…抗議の県民大会計画
 
 沖縄県で起きた米海兵隊員による女子中学生暴行事件から17日で1週間。県警の調べに対し、容疑者は乱暴について否認を続けている。被害に遭った少女(14)は事件から間もないため心理的なショックはまだ大きく、県警は「積極的な聴取はできていない」という。一方、事件への抗議の声は広がり続けており、政府は迅速に再発防止策を打ち出し、県民感情に応えようとしている。
 
 ■捜査
 
 キャンプ・コートニー(沖縄県うるま市)所属の2等軍曹タイロン・ハドナット容疑者(38)は調べに対し、車内で女子生徒にキスをしたり体を触ったりしたことは認めている。県警によると、容疑者の態度は強圧的ではなかったと見られているが、捜査幹部は「まだ14歳の生徒が、米兵の『支配下』にある強い恐怖感から激しく抵抗できなかったため」と悪質性を強調する。
 今回の事件は、被害者側からの告訴がなければ起訴できない親告罪。否認が続けば被害者の証言が頼りだが、事件を思い出しながら県警の事情聴取に答えることは苦痛を伴うだけに、告訴取り下げも懸念される。県警は生徒の心理状態を見守りながら慎重に捜査を進めている。
 
 ■再発防止策
 
 事件を受けて政府は「県内繁華街への防犯カメラ設置」「米軍警察が行っている基地周辺の夜間パトロールへの県警の同行」――といった再発防止策を示した。従来の米兵による不祥事に比べ対応は素早かった。米海兵隊普天間飛行場宜野湾市)の県内移設に影響が出ることへの懸念も背景にあるとみられている。
 ただ、防犯カメラ設置の実現性は不透明だ。1年半前に外務省が沖縄市に設置を提案したが、費用負担と管理運営を巡り国と地元が折り合わず、同市は「プライバシーの問題もあり、簡単ではない」と指摘する。
 一方、合同パトロールについては「逮捕の優先権」を県警側に与える方向で調整が進んでいる。沖縄市の塾経営比嘉ゆかさん(39)は「実現すればこれまでにない対応で評価できる」としながらも、「日米地位協定を改め、容疑者の扱いが日本人と米軍関係者とで同等でない現状を変えないと犯罪は減らない」とも語った。
 
 ■抗議行動
 
 この1週間で県議会をはじめ、16市町村議会、県町村会が再発防止策などを求め決議した。抗議集会も各地で開かれている。県子ども会育成連絡協議会や県婦人連合会など8団体は、1995年の米兵による女児暴行事件時と同様に、超党派で抗議する県民大会開催へ向け、近く各政党に結集を呼びかける方針だ。
 同協議会の玉寄哲永会長(73)は「95年の悲惨な事件のことが頭によみがえっている。県民が怒りを示さなければ、何度も犯罪を繰り返す米軍は変えられない」と話した。

「玉寄哲永」の検索結果 - 愛・蔵太のすこししらべて書く日記
 5年前の事件に対して、こんな意見も。
「吐息の日々」バックナンバー:米軍基地問題に冷静な議論を

■2001/07/05 (木) 米軍基地問題に冷静な議論を
 
 北谷町で婦女暴行の容疑に問われている米兵の身柄引き渡し・逮捕が遅れている。犯行の証拠は明らかであり、早期の引き渡しを求めたい。ただし、今後日米地位協定の改定を求めるのであれば、若干戦略的配慮は必要だろう。
 米国防総省が引き渡しに難色を示すのは、逮捕後の米兵の司法上の権利が損なわれるとの不信感のためだという。実際に権利の違いもあるようだが、要するに、不当な取り調べを受けたり、公正な裁判が受けられないのではないかという心配をしているのだ。日本人から見ればずいぶん失礼な言い分だが、我が身に置き換えてみればその心情には配慮が必要だろう。もちろん、米国には日本の刑事裁判の公正さを正しく認識してもらわなければならない。双方に正しい理解と相手の気持ちへの配慮がなければ、地位協定の見直しは現実のものにならないだろう。
 そういう意味で、一部市民団体やマスコミが必要以上に感情的な発言を繰り返していることが気になる。現実のデータを見ると、95−99の5年間で、沖縄の米兵による犯罪は検挙件数で239件で、年平均50件弱という。沖縄の米兵は約25000人、家族を含めると約50000人というから、十万人当たり年間二十数件だ。しかるに、日本の人口十万人当たり犯罪率は、同じ期間で年間1400〜1700件なのだ。これは認知件数なので検挙率分の差はあるが、それにしても米兵の犯罪が特に多いとは云えそうもない。ところが、一部市民団体やマスコミは、米兵が非常に犯罪を多発させているかのように言っている。これは米国の不信感を高めるばかりで、お互いにとって不幸なことではないだろうか。もちろん、米国には外国軍が駐留していることに対する沖縄県民の感情に十分配慮してほしいと思うが、わが国も米兵がいるから犯罪が起きるといった感情的な発言は戒めるべきだろう。
 もっとも基本的な問題の本質は、さまざまな事情で、日本が本来自ら担うべき世界平和のための軍事的な役割を米軍に肩代わりしてもらっていることにあるのだろうが、そこに拙速に手をつけることはできないだろう。であれば、本来矛盾を含んだ現在のあり方を、少しずつより良いものにしていくしかない。そのためには、お互いに感情的になって不信感を高めることは決して得策ではないと思う。実りある対話ができる環境作りが必要ではないだろうか。

 具体的に、「一部市民団体やマスコミ」とはどこで、そこが本当に「米兵が非常に犯罪を多発させているかのように言っている」のか興味を持ちました。
外務委員会 2001年7月10日

○土肥委員長 次に、赤嶺政賢君。
(中略)
 私、そこで、小泉総理大臣の発言について取り上げたいんですが、小泉首相は八日のフジテレビあるいはNHKの番組に出演して、当面は運用の改善で対応する方針を示しました。これについて沖縄の現地の新聞は、沖縄の米軍基地問題に対する小泉首相の感度の鈍さには失望した、このように言っています。それで、地位協定改定論議を、小泉首相はこのテレビ番組の中で、反安保、反基地、反駐留軍、反米闘争に持っていこうとするグループもいると発言しています。この発言を聞いてさらに沖縄の新聞は、この人は、小泉首相です、沖縄のことは何もわかっていない、このように指摘をしております。
 これだけの米軍犯罪が繰り返され、そこに意見を言う、これは沖縄の県民として当然ではありませんか。地位協定の見直しを求めていくのは当然ではありませんか。それを、反米闘争に持っていこうとするグループもいると言って、逆に安保容認であっても許されないような事態についてそこまで踏み込もうとしないという態度はおかしいと思いますけれども、この小泉総理の発言を撤回すべきだ、内閣として撤回すべきだと思いますが、いかがですか。
(中略)
○田中国務大臣 総理のそのような発言は私どもでは確認ができておりませんので……(赤嶺委員「テレビでやっているんですよ」と呼ぶ)テレビのどれでございましょうか。私ども、今……(赤嶺委員「フジテレビとNHKですよ」と呼ぶ)NHKの「日曜討論」七月八日の……(赤嶺委員「フジテレビ、フジテレビ」と呼ぶ)それはちょっと確認しておりませんのでコメントいたしかねます

 あと、もっと興味を持ったのはこの件。
コラム・沖縄少女暴行事件 黒船来航時から続く沖縄の米兵によるレイプ被害

米軍占領下では想像を絶する婦女暴行事件が起こっている。沖縄女性のメイドがその家の主人から暴行され、それを知った米人妻がメイドに庭に穴を掘らせたあと、銃で撃ち殺して埋めた事件が発生したが、その夫婦は逮捕もされなかった。そのほかにも女性が被害を受ける事件は続発している。婦女暴行を働いたあと、虫けらのように殺害する事件がほとんどである。刑法が改正されるまでは、親告罪でなかなか警察に訴えるケースがすくなかった。その実数は公表された事件の数倍ともいわれている。

「その実数は公表された事件の数倍」とは誰がどこで言ったことなのかは不明だし、メイド殺人も都市伝説臭がけっこうするんですが、本当はどうなんでしょうか。ご存じのかたは教えてください。
 こんな質問も「人力検索はてな」でしてみました(アンケート)。
2008年2月11日、沖縄の米兵が強姦(暴行)容疑で逮捕されましたが、この件に関してネットその他で情報を集めていたかたにお伺いします。容疑者は容疑を否認し、女性(少女)は「車内で暴行」されたと供述していますが、強姦(暴行)はあったと思いますか、なかったと思いますか。なお、強姦とは刑法における「強姦罪」の定義(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B7%E5%A7%A6%E7%BD%AA参照。「暴行又は脅迫を用いて女性の性器に男性が性器を挿入する行為(強姦)をした男性を処罰する犯罪類型」)に従います。
 ぼくの意見は「わからない(2008年2月18日の時点で、ネットその他に流れている情報では)」ですが、それがそんなに少数派でもないことがわかって安心。
(追記)「アンケートの意義」は「ネットその他で情報を集めて」いる・いたと自負する人が、この事件に関してちゃんとこれはまだ「強姦容疑」の段階の事件であると知っているか、ちょっと知りたいと思ったからでした。情報収集ならともかく、「米兵は鬼畜のレイプ犯人」的な情報発信をしている人(たとえば「米兵 レイプ 沖縄」で検索したりして見つかる人)を見て驚いたので。個人的に「世の中と自分とは、どれくらいズレがあるのか・ないのか」を確認したかった、という意味があるのですが、意味が見出せない人がいても、まぁそうかな、とは思います。
 
 これは以下の日記に続きます。
米兵の犯罪率に関するその後の情報

*1:セカンドレイプ」うんぬん言っている人はそもそも「ファーストレイプ」があったのかどうかに関して、容疑者に対する人権意識に疑問を持ったのですね。まぁレイプ以外のことはあったとは、ぼくも思いますが。