星一徹がもらったという一銭五厘の「赤紙」について

 こんな本を読みました。

ぼくたちのアニメ史 (岩波ジュニア新書)

ぼくたちのアニメ史 (岩波ジュニア新書)

 以下、p60より引用。

巨人の星』第一話で、空爆に遭遇した川上哲治の逃げる場面がある。走る川上はもちろんアニメだが、米軍の重爆撃機は実写のフィルムだった。原作にない星一徹の応召シーンでは、巨人の正選手に決まって喜ぶ一徹の目の前に突き出される、赤紙(軍の召集令状のことだ。一銭五厘のハガキの裏が真っ赤だったので、通称を赤紙と呼んだ)の大写しが、やはり実写だった。本物の赤紙を見つけようと、東京ムービーのスタッフが町内の銭湯に張り紙してまで、探したのだ。

 そんな馬鹿な。
赤紙 一銭五厘 - Google 検索
召集令状―いわゆる「赤紙」は、映画『硫黄島からの手紙』を観ればわかるように役... - Yahoo!知恵袋

召集令状―いわゆる「赤紙」は、映画『硫黄島からの手紙』を観ればわかるように
役場の兵事課職員が直接持ってくるものです。郵送されてくることはなかった。
だのに兵隊は「一銭五厘」で戦場に送られたという神話は
一体どこから生まれたのでしょうか。

映画をみるまでもなく、召集令状が郵便で送られるものではなかったということは、多くの人が知っている事実です。
じつは、はがき料金も、1937年(昭和12年)には1銭5厘ではなくなっていました
 
ただ、はがき料金が1899年から38年間にわたって1銭5厘であったことは事実です。
そこで、その金額をはがきに見立てて、「1銭5厘」という安い金額で命さえ奪われるということを、表現したのだと思います。

赤紙一銭五厘の裏が真っ赤なハガキ」伝説というのは、多分以下のテキストが広く伝わってからだと思われます。
日本ペンクラブ:電子文藝館 見よぼくら一銭五厘の旗

軍隊というところは ものごとを
おそろしく はっきりさせるところだ
星一つの二等兵のころ 教育掛りの軍曹
が 突如として どなった
貴様らの代りは 一銭五厘で来る
軍馬は そうはいかんぞ
聞いたとたん あっ気にとられた
しばらくして むらむらと腹が立った
そのころ 葉書は一銭五厘だった
兵隊は 一銭五厘の葉書で いくらでも
召集できる という意味だった
(じっさいには一銭五厘もかからなか
ったが……)

掲載作は、昭和四十五年(1970)十月「暮しの手帖」第2世紀8号に掲げた胸にしみるマニフェストである。

 マニフェストとファクトの混同があるようです。
 ただ、アニメ『巨人の星』放映はそれよりも前なので、
巨人の星 - Wikipedia

漫画は1966年から1971年まで『週刊少年マガジン』に連載された。TVアニメ化もされ、1968年3月30日〜1971年9月18日によみうりテレビ系で、全182話が放映された

 なにか、もう少し調べたい要求がわいてきます。
 この件についてもう少し詳しくご存知のかたは、コメント欄ででも教えてください。ちなみに、なぞなぞ認証の答は「やまぶき」です。
召集令状 - Wikipedia

一般に赤紙が「一銭五厘」と呼ばれるのは、応召者本人が本籍地から離れて暮らしている場合、実家から郵便で令状が来たことを知らせたのが原因と考えられる[3]。

 しかし辻真先さんのこの本、ヤマトやガンダムを初放映で見ていない人はかなり面白いと思うんですが(今でも毎週『銀魂』を見ていて、新海誠や『電脳コイル』を評価しているというのはすごいです)、資料的な意味では別の関係者の証言・データなどを見てみたくなるのが、私的に残念なところです。