ヴァン・ダインやノックスよりも古い日本製「探偵小説のルール」(平林初之輔)
書誌学者・谷沢永一を偲んで(2011年3月8日逝去)、『紙つぶて 自作自注最終版』を読みはじめる…重い…ていうか俺、『紙つぶて』も『完本・紙つぶて』も読んだ気がするんだけどな…。1969年から1983年までの、日本の出版物の一端を理解するにはいい本です(全集と古本の話がメインなので、「全貌」とかはとても言えない)。

- 作者: 谷沢永一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/12/06
- メディア: 単行本
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で、その「自注」のほうから引用。P189
探偵小説は如何にあるべきかの定義としては、ヴァン・ダインの「二十則」が最も有名で、次いではロナルド・ノックスの「十戒」が記憶されている。ともに1928年の発表である。ところでそれより前の1924年に我が国の平林初之輔が、「私の要求する探偵小説」と題して、実質上の“探偵小説六則”を提唱している。貴重な発想であるから、ここに紹介しておきたい。もちろん世界最初の規定である。
1・犯罪や探偵の方法が現に実行し得ること。
2・探偵の方法が直覚的でなく科学的であること。
3・舞台は其の国の重要都市であり印度ではいけない。
4・犯罪者と探偵の競争は互角の腕前であること。
5・科学的で現実的であっても常識的でないこと。
6・背景に時事また国際問題があっても愛国心などはいけない。
ヴァン・ダインの二十則が繁雑に過ぎるのに較べて、実に簡略な要約である。
(後略)
本当に世界最初かどうかは、諸外国の言語に通じてないおいらにはよく分からない。
…って、まぁ実は平林初之輔の全文が青空文庫で読めるんですけどね。
→私の要求する探偵小説
元テキストは、作品の具体名があったりして興味深いです。
以下のところから、ミステリ(探偵小説)に言及しているテキストを読むのも面白いです。
→作家別作品リスト:平林 初之輔
これなんかも。
→半七捕物帳の思い出
(前略)
しかしまだ直(すぐ)には取りかかれないので、更にドイルの作を猟(あさ)って、かのラスト・ギャリーや、グリーン・フラグや、キャピテン・オブ・ポールスターや、炉畔物語(ろはんものがたり)や、それらの短篇集を片端(かたはし)から読み始めました。
(後略)
ということで、プロジェクト・グーテンベルクでドイルの作品いろいろ拾う。いつ読めるか分からないけど。で、『炉畔物語』って何?