『西部の王者』----いろいろあった

 バッファロー・ビルの伝記映画。
西部の王者 - goo 映画
 民間人でありながら騎兵隊とインディアンの間に立って仲介・仲裁役に努め、東部のほうではすっかり伝説的英雄になって大統領に会い、ショー(見世物)としての西部を演出するスターとして後半を送った波乱万丈の物語。恋愛もちょっと嘘っぽいけど当時風のロマンスになっている。1944年という、もう日本が負け戦を戦っている最中に、こんなすごい映画が作られているのには驚きだ。思想的にはインディアンに理解を示している立ち位置で、単純に騎兵隊が正義の味方という風に描かれていない、というのも多分画期的な気がするんだが、そういうのはやはり同時代的にその映画を見ていないとどう評価されたのか不明。ただ、個々のキャラクターの奥行(背景)が、老軍曹とかしたたかな議員といった脇役も含めてしっかり作ってあるので、単純な話でもそれなりの奥行きが出てしまっている、というのはあるかも知れない。圧巻なのは渓谷でのシャイアン族と騎兵隊との馬に乗ってのぶつかり合い・戦闘シーンで、今まで見た西部劇映画でもベストに入れたい迫力。射撃をしながら双方近づいて、ついには河の中、馬上での騎馬戦の殴り合い・殺し合いになる演出には開いた口が塞がらなかった。今だったらCGとかでごまかせるような場面も、実物を使わないと映像ができない時代だったわけで、それを考えるとさらにものすごい。1950年代までの西部劇の、それなりの大作というのはとにかく牛や馬やインディアンや騎兵隊が、とても信じられないほど出てくるというのがよくわかる映画なのでした。話の根本部分にある通俗性(非・芸術性)も、ぼくの疲れた心にはあまり刺激的でなくて、いい感じの娯楽劇になっていたという感じ。もう少しがんばって西部劇を見ようとか、見たいとかいう気になるような映画でした。