エターナルフォース講談社の電子出版契約書(相手は死ぬ)

 講談社の謎の電子出版に関する契約書について。

池田信夫 blog : 講談社の「デジタル的利用許諾契約書」について

講談社の野間副社長は「年内に2万点をデジタル化しろ」と社内に号令をかけ、同社のほとんどの著者に「契約書」を送っているようだその1通を入手したので、一部を引用する:
(中略)
印税は第6条で「乙が当該利用によって得た金額×15%(消費税別)」と定められている。

 漫画家・鈴木みそ氏のツイート。
http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28498215455

講談社から単行本を二冊出しているが「デジタル的利用許諾契約書」というものが送られて来た。どちらも印税15%を一方的に印字して、全ての所有権は乙(講談社)に帰属する。とかいてある。「実際の電子書籍の発売は、まだ決まっていませんが」とある。まず話し合いがあるんじゃないんだ?

 鈴木みそさん、講談社からは「原作つき漫画(共著)」しか出してないですね。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062576058

マンガ 物理に強くなる (ブルーバックス) [新書]
関口 知彦 (原作)
鈴木 みそ (イラスト)
ISBN-10: 4062576058
ISBN-13: 978-4062576055

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062573342

マンガ 化学式に強くなる (ブルーバックス) [新書]
鈴木 みそ (著)
高松 正勝 (クリエイター)
ISBN-10: 4062573342
ISBN-13: 978-4062573344

 あと、池田信夫さんが講談社から本を出している、ということは確認できませんでした
 とりあえず、印税半分しかもらえない可能性のある人と、講談社で本を出したことのない人が「講談社の契約書、ひどくね?」と言ってても、それに賛同するにはもう少し資料(データ)が欲しいのだった。
 鈴木みそ氏「印税15%印字の契約書を受け取った」池田信夫氏「印税15%という契約書を入手した」の、どちらの意見も真とすると、原作者の印税が存在しない出版社が日本に存在する、という考えが一つ。
 別の考えとしては、池田信夫氏が「単著でない場合の契約書を入手した」「偽物の契約書をつかまされた」というのがあるけど、他にも何か考えられるかな。鈴木みそ氏宛ての契約書は出版社の印字ミス、とか。
http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28565524363鈴木みそ氏)

@nana4_japan この作品は原作つきのため簡単に自分の判断だけで出版社を移動することはできないので、その場合電子出版を見合わせることも視野に入れつつ、講談社をつついてみようと思ってます。35%を提示し、30以下では出すつもりはありませんから。

 講談社の判断としては、鈴木みそ氏関係の電子出版をあきらめ、漫画家を変えて電子出版で出すしかないのかな…。
 
 契約書に関する俺の意見は、非実在(的)契約書について言及していても意味ないので、以下のまとめから。
Togetter - 「電子書籍…新しい「世界」に飛び込むにあたって、「フェアな契約」とは?」
 池田信夫氏の伝聞情報だけでは何なので、自力でこんなの見つけてくる。「社団法人 日本書籍出版協会」の、「著作物利用許諾契約書(PDF:57KB)」。ここに「電子出版」に関する言及あるよ。協会に所属する出版社は、これ雛形にしてる可能性高い?

著作物利用許諾契約書

(前略)
第2条(その他の複製等への利用の許諾及び第三者への許諾)
 本著作物の以下の利用については、甲は乙に対して、優先的に許諾を与え、その具体的条件は、甲乙別途協議のうえ定める。ただし、乙が自ら利用する意思を表明しない場合の第三者への許諾については、甲はその権利処理を乙に委任し、乙は具体的条件に関して甲と協議の上決定する。
1・電子媒体に記録したパッケージ出版物として複製し、翻案し、販売すること(以下「電子出版」という)
2・本著作物を電子的に利用し公衆に送信すること
3・ 本著作物をデータベースに格納し検索・閲覧に供すること

 雛型が作られたのが「2005年」なので、「電子的に利用し公衆に送信すること」は「電子出版」とは言ってないのかな。
「甲(著作権者)が自ら利用する意思を表明しない場合の第三者への許諾については、甲はその権利処理を乙に委任」。これが「卸元」的考えですな。
 著作権者が「自ら利用する意思」を表明すれば、著作物利用は本人の自由(他社への委任も可?)、というのが俺の判断。
 この「社団法人 日本書籍出版協会」による雛型と違う契約書があって、それが「講談社」のものである、と言い張るなら、俺はもうその人相手にしない。「第三者に確認できる情報」を提示するなら、相手にしてやってもいい
http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28498215455

講談社から単行本を二冊出しているが「デジタル的利用許諾契約書」というものが送られて来た。どちらも印税15%を一方的に印字して、全ての所有権は乙(講談社)に帰属する。とかいてある。「実際の電子書籍の発売は、まだ決まっていませんが」とある。まず話し合いがあるんじゃないんだ?

 所有権(著作権?)の委譲まで契約に入れている契約書って、あんまり聞かないですな。とりあえず「デマ」タグ貼っておこう。 http://togetter.com/li/62185
 著作権が出版社に帰属する、という契約書って、日本の法律的に不可解
 まぁ、こんな新聞報道があるので。
asahi.com(朝日新聞社):本の電子化、契約書ひな型作成 出版社有利、作家反発も - 文化

本の電子化、契約書ひな型作成 出版社有利、作家反発も
 
2010年10月6日16時19分
 
 電子書籍の市場拡大を前に、国内の主要459出版社が加盟する日本書籍出版協会(書協、理事長=相賀昌宏・小学館社長)が、書籍の電子化に際して著作者と結ぶ契約書の「ひな型」を加盟各社向けに作った。著作者と契約した出版社が、作品の電子利用について「独占的許諾権を取得する」と、出版や流通の権限を出版社に集中させているのが最大の特徴だ。
 「ひな型」では、出版社は(1)DVD―ROM、メモリーカードなど電子媒体に記録した出版物として複製し、販売できる(2)インターネットなどを利用し、公衆に送信することができ、ダウンロード配信やホームページに掲載して閲覧に供することができる(3)データベースに格納し、検索・閲覧に供することができる、などとした。一方で、出版社側の役割としては「価格、広告・宣伝方法、配信方法および利用条件などを決定し、その費用を負担する」とある。
 「ひな型」は出版社側に有利な内容になっており、著作者たちの反発も予想される。書協は「加盟社を縛るものではなく、あくまで『ひな型』。個別の契約で、作者の希望を入れるのは自由」としている。書協幹部は「まずは市場を大きくするために、出版社に権限を委ねてほしいということ。売り上げが増えれば、各出版社は当然、印税を増やすなどの形で著者に還元するだろう」と話す。
 今年は「電子書籍元年」といわれ、今後、電子書籍の契約が急増するとみられる。大手出版社は独自に契約書を作成して対応を始めているが、大多数の中小出版社から「ひな型」作りの要望が寄せられていた。書協は今月中旬にも加盟各社への説明会を開く。
 一方、雑誌の電子化では、日本雑誌協会日本文芸家協会日本写真著作権協会の間で、作家や写真家らの著作権を一定期間に限って出版社に譲渡するガイドラインの大枠が合意されている。煩雑な著作権処理を円滑にすることで、電子雑誌の流通を促進するのが目的だ。(西秀治)

日本書籍出版協会」に、「契約書ひな型」が公式アップされたらまた何か言うかもです。
 
 それから、印税率に関しては、実はこんな回答をいただきました
http://twitter.com/kuratan/status/28613266487

@MisoSuzuki もう少しくわしく知りたくなったので@します。鬱陶しいようでしたらすみません。原作つきの漫画で「印税15%を一方的に印字」ということは、原作者との印税はどういう割り振りになっているんでしょうか。15%を2人で分割、なら「印字」は「15%以下」なのでは?

http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28666059298

@kuratan 間違えていました。二人で分割する場合、大本は25%のようです

http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28666001494

昨日の「デジタル的利用許諾契約書」講談社基本25%を提示するようです。著者が複数いる場合(原作付きなど)それぞれに内部で割り振る。自分の場合は原作10%、漫画15%だろうと思われます。訂正させていただきます。ただし、それは売値ではなく卸値に対するものになります。

 25%を著者お互いの「力関係(あるいは執筆の苦労関係?)」に応じて分割する、という感じですか。本当に微妙な数字…。
 ぼくの立ち位置は引き続き、実物見ないと分からない、です。これでまた、講談社電子書籍印税が25%というのも、根拠ないまま流布して、間違ってたら目も当てられない惨状に。
 しかし、池田信夫さんの入手したと言っている、

印税は第6条で「乙が当該利用によって得た金額×15%(消費税別)」と定められている。

という、講談社の「デジタル的利用許諾契約書」の存在・記述がちょっと、どころではないレベルで怪しく感じられてきた。単著の場合は「印税15%」というのはあり?
 とりあえず、「印税15%」という偽伝聞情報(?)を元にして、高いだの安いだの言ってた人は、今どんな気持ち?
池田信夫氏の「講談社の「デジタル的利用許諾契約書」について」はひどいでしょう | ポット出版

で、どこも15%というのはカルテル、っていうなら、紙の本の10%って常識もカルテルか?

そもそも電子書籍も出版社の仕事だろ、ってな―Hey, publishers, E-books are books, too | Books and the City

アメリカでも基本的に新刊のEブックの印税は15%がデフォになりつつある。

電子書籍印税率15%の「ひな形」は搾取なのか?: マンガ家Sのブログ

しかし、新人の場合、予想に反してまるで売れず、宣伝費のかけ損、原稿料の払い損で終わる場合だってあるわけで、最初は紙10%、電子15%という条件は妥当な線じゃないだろうか。

 しかし俺以前には誰も、鈴木みそ氏の講談社の本が「共著(原作つき漫画)」であること、池田信夫氏が講談社から本を出していないことに言及していないとは驚きだね! みんな俺をTwitterでフォローすると半年でメディア・リテラシーが10倍ぐらい上がるよ!
愛・蔵太 (kuratan) on Twitter