『海底二万リーグ』(夏休みの読書感想文用)

夏休みも後半に入り、そろそろ宿題の始末も本番になってきた昨今ですが、子供あるいは本人の「夏休みの宿題」として、読書感想文は面倒くさい筆頭だと思います。
そこでお子様(あるいは本人)のために、誰にでも利用できるコピーフリーの読書感想テキストを用意してみました。「夏休み 読書感想」とかでこのサイト(日記)に来たかたも、ぜひご利用ください。
ただし先生にこのテキストのまま提出すると、多分怒られると思いますので、適当にアレンジするとかは自己責任で。

夏休みにぼくは「海底2万リーグ」という本を読みました。この本の作者はジュール・ヴェルヌという昔のフランス人で、他にも月世界旅行や地底探検の話なども書いているという、SF小説を書いた人として有名らしいです。
「海底2万リーグ」は1869年に書かれた物語で、ネモ艦長という人が、ノーチラス号というすごい潜水艦を使ってあちこちの海や海底で冒険をする話です。主人公たち(この小説の語り手である海洋生物学者アロンナクス教授と、その召使いのコンセイユ、それに「もり打ち」のネッド・ランド)は、最初は「軍艦も沈める巨大なクジラ」と思われていたノーチラス号に船を沈められて、ネモ艦長とその仲間たちに助けられてからは、その冒険を一緒に体験することになります。
ノーチラス号が船を沈める方法は、今の潜水艦が魚雷を使う方法とは異なり、直接船の先頭部分(衝角)を相手の胴体にぶつけるラミング攻撃というもので、古代から一般的なものでした。
火器が使用される近代以前は、白兵戦と併用された効果的な戦法でもあったのですが、艦隊決戦としては日清戦争以前におこなわれた普墺戦争時のイタリア・オーストリア間におけるリサ海戦(1866年)が、最後の戦果になりました。この海戦で司令官カルロ・ペルサノひきいるイタリア艦隊は、オーストリア隊司令官ウィルヘルム・テゲトフのひきいる鉄張り戦列艦7隻を主軸にした特攻作戦により2隻沈没、1隻大破(のちに沈没)という被害をこうむり、ペルサノは職をうしないました。
日清戦争の際に使用された軍艦でも、北洋艦隊司令丁汝昌は旗艦「定遠」を中心に、衝角戦法を意図した編成・理念を立て、それにより犠牲にされた艦の機動力や旋回性能が、日本艦隊の勝利をまねくことになります。戦法や戦術、武器の効果的な使用は当時の科学力や理念を現実のものとする工学といったベーシックなものに由来します。
潜水艦の武器として、その歴史とともに進化していったものとしては魚雷のほうが一般的でしょうか。
魚雷という、水中をモーターの力で移動して敵の船を攻撃・破壊するという兵器のアイデアがはじめて実用化されたのは1866年、オーストリア海軍の軍人であるC.ルピスが、イギリス人技師のロバート・ホワイトヘッドと共同で開発した「ホワイトヘッド魚雷」というものでした。速力22ノット、有効射程は400mという性能は、実用的な効果を考えるとまだまだ物足りないものではありましたが、第一次大戦時には速力42ノット・有効射程6.4キロというレベルに達し、近代海戦における潜水艦の役割は、Uボートの魚雷攻撃による通商破壊をメインに、それなりの価値・異義を戦争施行者が見出したのでした。
余談ですが潜水艦の実戦使用はアメリカの南北戦争時代で、南軍による9人乗りの人力推進潜水艇ハンリー号が、北軍木造蒸気帆船フーサトニックを撃沈したのが最初だと言われています(1864年)。潜望鏡も監視装置もなく、手でスクリューを回すという原始的きわまりない危険な乗り物でしたが、現在は退役中の旧ソ連・タイフーン型原子力潜水艦で水中排水量48.000トン、乗員150名というスケールの大きなものになり、日本の海上自衛隊も「ゆうしお」型潜水艦3隻(基準排水量2250トン、乗員75名)ほか16隻が実戦配備されています。
ヴェルヌが当時どれだけの情報を得ていたかは不明ですが、1860年代当時において、軍事目的が主な理由であるとはいえ、最新科学と海洋冒険のための新しい技術開発に目をつけ、小説に仕上げたジュール・ヴェルヌのアイデアには感心しました。
ネモ艦長とノーチラス号の最後は、楽しかったりこわかったりする海の冒険と違って、少しかわいそうでした。
 ヴェルヌのほかの物語も、今度は読んでみたいと思いました。
(400字詰め原稿用紙5枚・1842字)

個人的な感想としては、「図書室」と「喫煙室」が同じ、という設定がどうも納得いかない。本についたタバコの煙(タール・ヤニなど)ほどやっかいなものはないので、潜水艦内で喫煙オーケーの設定でも、図書室だけは禁煙にして欲しかったです。
 
参考資料(ネット内のみ)
「海底二万リーグ(上)」(電子書店パピレス
リサ海戦
魚雷の構造
潜水艦 - Wikipedia