『2001年宇宙の旅』でサルが投げた骨は何になったのか

 以下の本を読んでまして、

図説 武器だもの

図説 武器だもの

★『図説 武器だもの』(武器ドットコム 著 大波 耀子/幻冬舎コミック/1,575円)【→amazon

マンガや映画のあの武器がわかる!実際の使われ方とともに、フルカラーイラストで紹介中!だいたい180種類の武器が載っています。

 こんなネタが未だにあったのに驚愕。以下引用。p120

 棍棒は恐らく人類が初めて手にした武器であり、『2001年宇宙の旅』ではモノリスに進化を促された猿人が最初に使う道具として、骨製の棍棒を描いておる。そして、猿人が骨を空に放り投げると場面が一転し、それが宇宙船に変貌する様子は、ヒトの作るすべての道具は棍棒の延長に過ぎないといっているようである。

 このシーンに関する誤解があるのは日本だけなんだろうか。
2001年宇宙の旅』のそのシーンを、もう一度よく見てください。
 骨が変わるものは「宇宙船」ではなくて核搭載の軍事衛星です。
 映画のシナリオではこうなっています。
2001: A Space Odyssey (1968) - Screenplays for You - free movie scripts and screenplays

EARTH FROM 200 MILES UP

B1a
THOUSAND MEGATON
NUCLEAR BOMB IN ORBIT
ABOVE THE EARTH,
RUSSIAN INSIGNIA AND
CCCP MARKINGS
(NARRATOR
By the year 2001, overpopulation has replaced the problem of starvation but this was ominously offset by the absolute and utter perfection of the weapon.)

 で、このあとに「B1b AMERICAN THOUSAND MEGATON BOMB IN ORBITABOVE THE EARTH.」「FRENCH BOMB」「GERMAN BOMB」「CHINESE BOMB」と続くわけですが(実際の映画はちょっと違う)、「宇宙船」であるところの「ORION-III」はその後に出てきます。
 これはテーマ的に非常に重要なことなので、ちゃんと覚えておいて欲しいのです。
「兵器」としての最初の「骨」が、最新鋭の「兵器」(軍事衛星)になっている、というシーンに意味があるわけで。
 要するに「サルが宇宙に行けるようになった! すごい進歩だ!」じゃなくて、「宇宙に行けるようになったサルでも、骨を武器にしていた時代と根本部分が同じ(全然進歩してない)!」、というのが、原作者(アーサー・C・クラーク)のアイロニーだったりするわけです*1
 ということで、以下のキーワードで引っかかっているテキストを書いている人は、
2001年宇宙の旅 骨 宇宙船 - Google 検索
 映画の再確認をおすすめしておきます。
 ちなみに、『図説 武器だもの』は普通に面白い本でした。
 
(追記)
引用テキスト部分は「そして、猿人が骨を空に放り投げると場面が一転し、それが核搭載の軍事衛星に変貌する様子は、ヒトの作るすべての道具は棍棒の延長に過ぎないといっているようである。」でも全然問題はありません(ていうかそのほうがいいのかも知れず) 

*1:映画監督・キューブリックアイロニーかなぁ。考えてみるとそのほうが自然か。『博士の異常な愛情』の監督だし